仙台育英学園高等学校、情報科学コースeスポーツ部部長の武田若葉先生は部長歴2年目。同校へ就職して初めてeスポーツと出会ったという彼女にとって、部活動として歴史が浅く、確固たるノウハウのない部の状況には困惑したことが多々あったそう。そんな武田先生は生徒たちに直接プレイの指導ができない反面、昨年12月20日より宮城県の一部エリアで提供開始となった高速通信サービス「フレッツ 光クロス」を早々に導入するなど、就任当初よりeスポーツにまつわる情報のアップデートに注力。設備や通信環境の向上が部のレベルアップに直結すると考えている。
一番の特徴は家からでも参加できる生徒がいることです。部員たちには基本的に部活動を強いることなく、自由参加にしてもらっています。その中には、家の方が環境が良いということで、自宅から接続する生徒もいます。校内にいる生徒と家の生徒と実際にランクマッチを何度も一緒にプレイする事もあるので、そのようなコミュニケーションをとれる点も特徴かもしれません。あとは、部員たちはずば抜けてパソコンに詳しいこと。PCの使い方など、誰に言われるまでもなく自分で調べるので、機材に詳しい生徒が多いんです。好きが高じて動画を編集する生徒もいるので、育英祭(文化祭)ではクリップ集を作ってもらっています。ちなみに部活のルールは “備品を大切に扱う”、 “スポーツマンシップに乗っ取ってプレイする”。そして、“本校の生徒として、模範の生徒となるように行動する”ということです。
eスポーツ部に所属している生徒の中には不登校だった生徒もいます。そういった生徒が、部活動の一環としてゲームを通じて学校と関わりを持てるようになることもあります。学校に来るモチベーションのひとつになる。そういった動機付けで、ディスコード上での会話をきっかけに、校内に友人ができたり、協調性を高めたりする相乗効果があるのではと思います。また、生徒たちが英語でチャットをしているのを見ると、限られた時間の中で素早くコミュニケーションを取らねばということで文法を気にせずにコミュニケーションできるメンタリティと、タイピングやブラインドタッチができるテクニックが身についたりする姿を見れるのも嬉しいですね。
実は、指導をしたことがなくて(笑)、マネージャーのような存在でサポートしています。当部にはゲームタイトルが6つもあり、一人ですべてを平等にみることは難しいので、下手な口出しはしないようにしています。幸運にもいろんな方面からお声掛けいただける機会が多いので、コーチングイベントなどに参加したり、外部の方の指導を受けられるチャンスを逃さないように事務作業を頑張ってやったりするようにしています。
学校が協力的に環境を整備してくださったので、『フレッツ 光クロス』のネットワーク構築のほか、ゲーミングP Cとゲーミングチェアが生徒用に40台あります。ここは学校なので、予算内でやりくりしながら、なるべく基本的なスペックのデバイス用品は部の活動費で用意したいと思っています。素晴らしい設備を多くの生徒に最大限活用してもらいたいので、うちの部は部費なしで生徒会費だけで運営しています。設備費も取ってないんですよ。
より良いプレイ環境の整備として価値があると思っています。生徒も学校が部活として認めてお金をそれなりに当ててくれるということで、学校の中に帰属意識が生まれる側面もあると思います。
“報連相”をしっかり行う力、練習を自分たちでスケジューリングするスキル、コミュニケーションスキルなどの向上が見込めると思うので、そういったスキルが将来、生徒たちが社会に出た後も生きていくのではないかと考えています。
eスポーツ産業は競技タイトルも増えていますし、広がりがありますね。当部でも現在、年に一度近隣の小中学生向けにeスポーツ大会を開催しています。生徒たちからも出たアイデアですが、今後は部の活動の一環として、ゲームを介護に生かせるような取り組みをするなど、eスポーツがもっと関わりやすいものとして社会に普及していく世の中になっていったらなと思います。
日々、多忙な教員生活の中で、生徒の自主性を生かし、部内では自らマネージャーのような存在というように温かく生徒たちを見守る。eスポーツがゲームの域を越えて、生徒たちに寄与しているのは明らかだが、まだまだ社会全体として、eスポーツを捉える物差しはさまざま。eスポーツ×教育というものを体現するeスポーツ部としては、地域や周辺のコミュニティなどに対して、働きかけられる活動はまだまだあると武田先生は続ける。
「フレッツ 光クロス」のストレスフリーな通信環境は、教育現場と生徒たちの挑戦を多角的にサポートするだけでなく、未来の人材育成を支え、地域のコミュニティ活動をも後押しする存在になり得るのかもしれない。